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レールに敷かれた人生に見切りをつけて
栃木県足利市内の国道沿いに立つ屋台「カフェ アラジン」。屋台の奥には、2つのテーブルが置かれています。コーヒーの麻袋で作られたカーテンが舗道を仕切る役目を果たし、その場所はちょっとした隠れ家の風情です。 すぐ隣に市民会館があるため、イベントでやって来たお客さんが立ち寄ることも多いとか。発動機を使っていないため、テーブルに置かれたランタンの灯りがたよりですが、それがまたこの店の魅力ともなっています。この日も、「ランプの光って心地いいね」と、初来店のお客さん数人が談笑していました。
この店のスタイルは、1971年の開店以来ずっと変わりません。店主の阿部次郎さん(58歳)は、父・弥四郎さんが屋台を始めてすぐに、それまで勤めていた郵便局を辞め、店を手伝うようになりました。22歳のときです。コーヒーのいれ方も父から教わりました。 「サラリーマンが、敷かれたレールに乗ってるみたいで、すごく嫌だったんですよ」 お客さんと過ごす時間は、毎日違って新しい
ところが、次郎さんは接客業初体験。見るとやるのとでは大違いで、「『いらっしゃいませ』『ありがとうございました』が、なかなか言えなくて…」と振り返ります。 しかし、父とともに屋台に立つうちに、だんだんとお客さんとの会話にも慣れ、今ではそれが楽しみとまで思えるように。「学校の先生、医者、自営業の人…、それぞれその道のプロの人たちが来るでしょう。そういう人たちの話っていうのは、本当に自分の知らないことばかりですよ」 この9月で37年目を迎えるという「カフェ アラジン」には、3代に渡ってコーヒーを飲みに来る家族もいれば、毎日欠かさず仕事帰りに立ち寄る人もいます。10代から80代まで年齢も幅広く、次郎さんはどんな世代のお客さんとも話していて楽しいと言います。 「よく、年が違うと話が合わないって言うでしょ。でも、自分は平気です。誰の話を聞いていても楽しい。コーヒーを飲むというより、話をしに来るお客さんもけっこういるんですよ」 また、屋台の奥の2つのテーブル席は、狭いゆえ、知らない者同士がコーヒーを片手に、ともに会話を楽しんだり、時には交流する場へと発展することもあるようです。 屋台に立ち、コーヒーをいれる…その作業そのものは毎日変わらないことですが、目の前に座るお客さんが変われば、過ごしている時間は毎日違う。次郎さんはそう感じています。そしてそれが、次郎さんの活力源でもあるのです。
とはいえ、この屋台カフェ、晴れの日はいいけれど、雨や雪が降れば休業せざるを得ません。加えて、群馬に近いここ足利市は、冬場は"上州の空っ風"が吹き荒れることも多く、開店できるかどうかはその日の天候次第。 「収入が不安定という点では大変です。天気が悪くて、営業できない日が続くと心配になっちゃいますね。それに、今はまだ大丈夫ですが、年を取ってくれば体力的な面でも厳しくなるでしょう。でも、後悔はしていませんね。やめようと思ったこともない」と、きっぱり。 あと13年経てば、じつに開店50周年を迎えます! その頃、次郎さんは71歳。それでもまだ、80歳まで続けた父・弥四郎さんがリタイアした年齢にはたどり着かないのだから、驚きです。 夏は午後5時開店で、深夜0時まで。梅雨前には、コーヒーの麻袋のカーテンも取り外されます。それ以外の時季は午後3時から、天気さえよければ毎日オープンしています。近くまで来たら、ちょっと思い出して寄ってみてください。父と子が伝え継ぐ屋台コーヒーの存在を。 |
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