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那須で始めた、盆栽の無農薬栽培
那須の雑木林をくぐり抜けると、加藤さんの「奏デル盆栽」が見えてきました。音楽好きな加藤さんが育てているから、「奏デル盆栽」。決して、盆栽が歌うわけではありません。取材に訪れたのは2月上旬。盆栽はすべて温室のなか。春を待って、今は眠っているとき。植物に寄り添う暮らしの加藤さんは、植物と同じく、冬はのんびり本を読んだりして過ごします。春になれば、また忙しい日々が待っているのです。 那須に越してきて13年。加藤さんは盆栽を無農薬で育てるようになりました。それも自然な成り行きのこと。身近に農家のかたがたくさんいて、無農薬、無添加で作られた野菜を食べるように。すると、自分の体の調子がよくなり、体質が変わってきたことを実感。人間がそうなら、植物も同じはずと、盆栽を無農薬栽培に移行していったのです。 完全に農薬を使わなくなったのは、5年前から。今は純正の石鹸、木酢液(もくさくえき)、植物から採取した漢方のようなエキスといった自然素材のもので害虫駆除を行っています。
「薬剤をやめてからも害虫が増えることはありません。むしろ、薬剤散布をするときにマスクをしたり、散布後に温室に入れないといった気づかいが減って気がラクになりました。もっと早く農薬はやめればよかった」と、話します。 農薬をやめたことが関係しているか分かりませんが、と前置きをしながら、植物に抵抗力がついた気がするとも。年に2回程度、加藤さんは東京や名古屋などで1週間ほどの展覧会をします。ビルのなかなど、植物にとってはよくない環境で過ごすので、戻ってくると盆栽はダメージを受けて具合を悪くしていることがよくあったそうです。ところが、農薬をやめたここ数年、底力がついて丈夫になったというのです。 環境を変えることで、新しい出会いがあり、発見がある。そして、その変化を見過ごさず、受け止められる加藤さんの感性の豊かさに五感を磨く大切さを教わった気がします。 植物は思いどおりにならなくて当たり前!加藤さんは、物言わぬ植物との会話こそが、盆栽を育てるために大切なことといいます。針金で形を人工的に作るのではなく、植物の伸びたい方向を見定めて、その方向に年月をかけて伸ばしてあげる。それが加藤さんの盆栽です。それには、植物の気持ちを感じるしかありません。そう、感性を豊かにすることが植物との付き合い上手なのです! 「植物との関係でいうと、こちらがあらかじめ決めるということはないんです。計画してもそのとおりにはなりませんから。主従関係があるとしたら、こちらは従。従のほうが抵抗なくうまくいくことを感じるんです」 これは相手が植物の話ですが、人間関係にも通じそうな考え方です。知らず知らずのうちに私たちはかたくなになり、人とぶつかってしまうのかもしれません。植物は、自分の欠点を教えてくれる素敵なパートナーになるとは思いませんか。 盆栽は誰にでも、いつからでも始められますか? 加藤さんに聞いてみました。返ってきた答えは、「投げ出さなければ、いつからでも誰にでもできますよ」と。
犬を飼ったことがない人が犬を飼い始めたら、本を買ってきたりして犬を育てる方法をいろいろ勉強して、実践するでしょう。植物も同じこと。生きているのですから。生きてほしいと思い、育てることが大事です。 「私は盆栽を育てていますが、動物であっても何であっても気持ちがかけられるものがいるということは幸せですよね」 優しく微笑みながら語ってくれた加藤さんの笑顔が印象的でした。 |
◆加藤文子さんの盆栽展覧会のご案内◆5月9日(金)〜21日(水)千葉市の画廊「椿」(住所:中央区春日2-2-9 電話番号:043-247-5906)にて。 夫の陶芸家・小沼寛さんとの二人展の予定。 |
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