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二地域居住が叶えた講談師夫妻の願い(第2回)

夫婦は違うから面白い!
お互いの個性を認め合えば、
楽しみも喜びもふくらみます。


個性を尊重すれば、うまくいく

新潟の「梅桜亭」で毎月寄席を開く宝井琴梅さん、琴桜さん夫妻に尋ねてみました。いつも一緒で窮屈に感じませんかと。
すると妻の琴桜さんから意外な発言が。「いつも一緒じゃないの。興味のあるものが違うから。似た者同士もいいけれど、うちは似てないからいいんじゃないかな?」。その言葉が意味するところから今回は紐解いていきましょう。

米作りはなんと、琴梅さんだけのライフワーク。琴桜さんの興味はほかにあるといいます。「私のライフワークは、女性問題。男女の共同参画とか、女性の働き方とか。私たち漫才じゃないから、自分のテーマは大事にしています。それが個性でしょう。けれど、ふたりとも自分たちの寄席がほしかった。そこが共通点です」

そこには最近の講談事情がありました。落語や漫才人気に押されて、現在東京には毎日興行する講談の定席はひとつもない。話す機会を求めて琴梅さんは今も寺の境内で辻講釈をしています。それも芸を磨くため。だから、宝井夫妻は自分たちの寄席がほしかったのです。

そんなふたりの関係だから、琴桜さんは米作りに毎回は参加しないで、仕事優先。行けるときに行く。「向こうに行けば、手伝う人がいないわけじゃないしね。そういうのも無理がなくて続いた理由かな」と琴桜さんは淡々と語ってくれました。

一方、琴梅さんが米作りをするのは、講談のため。自らを農業講談師と名乗るほど、農業には思い入れがあります。
「戦後の食べ物のない時期、本当にひもじかったんです。農業は命の糧ですから。そのいちばん大事なものを外国に依存するのはおかしいのではないかと。農業の大切さを講談にかけて伝えたいんです」
そのためには農家の本音が聞きたいと、2年かけて自転車で日本縦断ひとり旅をしたこともあります。

琴桜さんのそのときの反応は…。
「そろばんをはじく前に行動する人ですから。何カ月も帰ってこないわけですよ。事前に相談もないし。私も相談されても困るけど…。自分のことで手一杯だから、人のことまで手が回らないの」

そう、農業をテーマにするのは、琴梅さんの問題。なんとも絶妙な夫婦の距離感です。

新潟の男たち、料理に目覚める

夫婦の間には、新潟の家を持つときに交わしたある約束がありました。「梅桜亭」の台所に琴桜さんはノータッチ。料理は男がするというものです。

料理上手な男友達が毎回は来られなくなったのち、入れ替わり立ち代り地元の男たちが台所に立つようになった、と琴桜さんはうれしそう。
「地元の男たちがMy包丁持参で作るようになったんです。地域の何もしなかった男どもが刺激されて、料理をするようになって。」

夫の琴梅さんも例外ではありません。今では率先して台所に立ち、料理番組をビデオに取って、レパートリーを増やすほどの料理好きに。しかし、結婚当初は家のことは女性がするもの。一切、家事はしなかったといいます。

「掃除、洗濯は嫌だけれど、やってみるとそれなりの楽しさはあります。とくに料理は喜んでします。なんでこんな楽しいことをカミさんにやらせていたんだ!と悔しいんです」
そう話す琴梅さんが今ハマっているのが、そば打ち。福井のそば打ちの昇段試験を受けて、いまや初段をもつほどの実力者です。今年から米だけでなく、そばの畑を借り、そば栽培まで始めてしまいました。

そば打ちの腕前は、中越地震でも役立ったとか。小千谷の被災者が来られたとき、そばをふるまい、もてなした琴梅さん。「少しだけど、日ごろお世話になっているみなさんの力になれてうれしかった」と話します。

米作りにそば打ちに、思い立ったら吉日の、行動派の琴梅さん。「琴桜さんの稼ぎがあるからできること」と冗談まじりの発言が飛び出すと、「立場を早く交代してほしい」と、応戦する琴桜さん。果たして、真相はいかに…?

夫婦漫才のように笑いが絶えない講談師夫婦の周りには、お米だけではなく、さまざまな実りがあるようです。

「梅桜亭」の寄席
毎月第4土曜日、日曜日開催。
詳細はホームページでご確認ください。


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