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「遠いところまで、ようこそ」 アスファルトの道路の脇に、小さな農道があり、上がっていくと、のどかな田園風景が見渡せる丘の上に出ました。そこに、一軒の木の家が建っています。玄関を開けて微笑む人は、鶴田静さん。エッセイスト、菜食文化研究家として、何冊もの著書がある方です。
ここは千葉・鴨川にある、鶴田さんと夫で写真家のエドワード・レビンソンさん(以下、エドさん)の住まい。玄関にはエドさんが敷き詰めた色とりどりのタイルが、楽しげにお客を迎えます。 鶴田さんの朝の日課は、庭へ出ること。もとは棚田だったので土地に段差がありますが、家の西側の斜面に2人でちょうど食べるだけの野菜や、好きな花木を植えています。ベジタリアン料理の著書も多い鶴田さんですから、毎日の食事には、庭でできた野菜が欠かせません。夏を迎えたこの時季は、トマトやピーマン、ナス、キュウリなどが勢ぞろい。食べごろのものを取っていきます。
歩きながら鶴田さんは、ついでにハサミで雑草や、伸びてしまった花木をチョキチョキ。夏はぐんぐん伸びるから、気がついたときに切っておかないと大変なことになるのだそうです。「ちょっと見ないと、あっという間に草が伸て。ときどき、なんて無駄なことを毎日しているんだろうって思うこともあるんです(笑)」
住まいは、棚田だった土地を考慮して平屋と2階屋を作り、デッキでつなげています。鶴田さんもエドさんも自宅での仕事が多いことから、仕事場と生活の場を完全に分けました。2つを結ぶデッキには、下の斜面に残っていたネムノキが伸び伸びと葉を茂らせ、花を咲かせています。豊かな田園の自然を上手に取り込んだ暮らしは、まさに誰もが憧れる田舎暮らしではないでしょうか。 |
田舎暮らしは目的そのもの
しかし、2人は簡単にこの家を手に入れたわけではありませんでした。この家は、鶴田さんご夫妻が、まさしく2人で知恵と力を絞って建てたものです。それこそ道作りから始まって、井戸掘り、庭に土を入れて花木を植え、菜園作りまで…。家の設計も2人で考えました。そして、壁を塗ったり、レンガを積んだり。できることは自分たちで行い、3年前、2年がかりでようやく完成しました。家を建てる経緯は2人の共著「二人で建てた家」(文春文庫PLUS)に詳しいでしょう。 お二人は今まさに、50代と60代。以前より無理がきかなくなる年代ですが、この家づくりでは手で井戸を掘ったり、ダンプカーいっぱいの砂利を買ってきては道に敷き詰めたりと、肉体的に辛い場面が何度もあったようです。
「それは、エコロジカルに暮らしたいということでしょうね」 鶴田さんは言います。もとは東京で暮らしていた2人が鴨川に移り住んだのも、この家の前に15年ほど住んでいた古い農家を、友人から借り受けたことがきっかけでした。 「夏は冷房もいらないくらい涼しいし、土地がたくさんあるから野菜も作ったりできる。エコロジーを取り入れた暮らしが、もうちょっとスケールが大きくできるかなという思いがありました。でも住んでみると、不便で暮らしにくい部分はたくさんありました。梅雨の頃は湿気がすごくて、写真や絵は飾っていられない。段差だらけだから、転んで骨折したりね」 その農家を出ていくことになり、巡り合わせでこの土地を手に入れたとき、鶴田さんとエドさんが何よりもまず大切にしたことは、やはりエコ・ライフでした。この家では、雨水を溜めて花の手入れなどに利用したり、太陽光発電を取り入れています。そして、自然素材を使うこと、前の家より狭くてよいから、間仕切りを少なくしてバリアフリーにもこだわりました。壁で部屋を小さく仕切っていない分、広々としていて、さらに置いてあるソファや机なども簡単に動かせるように考えられています。 |
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