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コウなんてなければいいのに…
そう思ったことがある方は少なくないかもしれません。コウはすぐ取り返すことができないので、どこか他の所に打って(コウ立て)相手が応じたら、コウを取り返す。コウ立てを考えながら、コウ争いを繰り返すのを煩わしく感じるのでしょう。たしかに険しいコウ争いを避けられないことがあります。しかしそういうことは多くなく、コウに簡明かつ的確な対応をすることは概して難しくありません。
まず、そのコウが重要かどうか。現時点において最重要でないなら、コウを争うより他に転じた方が優ります。相手が固執しても、そのコウは譲ればいいのです。では、大いに重要なコウはどうするか?
自分から軽率に大コウを仕掛けるのは危険で、コウ立ての具合などを事前に見通していなければなりません。しかし相手に仕掛けられたときは簡単。相手のコウ立てに応じないで、大コウを解消するのが適切な場合が多いのです。それを「天下コウ」と呼びます。その代わり、相手にコウ立ての所を連打され、小さくない代償を与えるのはやむをえません。その場合、差し引きで損をしていなければ満足しましょう。
「フリカワリ」です。碁は一得一失のゲームですから、フリカワリはしばしば生じます。とりわけ、コウになればフリカワリで決着するのがふつうです。
大コウを巡るコウ争いが、派手なフリカワリを呼ぶことがあります。しっかり生きていた黒石が死に、代わりに大きな白地だった場所が黒地になる…など。そうした大変化を招くことも珍しくないので、「コウは碁の華」と言われます。
コウが三つ同時に存在し、同形反復となる場合を「三劫」といいます。
図の黒はアタリになっています。取られないためには黒1(またはb)とコウを取るよりなく、するとアタリになった白はaとコウを取るよりなく、するとまたアタリですから黒bよりありません。続いて、白が1の所のコウを取り返し…六手で一巡して元の形に戻ります。また黒1と取って…キリがありません。
図は一か所の死活をめぐる三劫で、類型が生じるのはたいへん稀です。一局の碁で別の所に三つ(あるいは四つ)のコウが存在し、形勢に関係するため双方がどのコウも負けられないという場合も稀に生じます。
三劫(四劫)は対局者双方がコウを譲らず、同形反復になるときは無勝負です(日本囲碁規約)。
囲碁界でよく知られている三劫の話があります。本能寺の変の前夜、織田信長の面前で打たれた本因坊算砂と利玄の碁に珍しい三劫が生じたというのです。以来、「三劫は不吉の前兆」と言われるようになったとか。
次回(6月)はその三劫の話をしましょう。今から425年前(天正10年)6月1日のことですが、伝わる話が真実かどうか。
(2007年5月発表作品)
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