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トップページ > エンターテイメント > はじめての碁会所 > 第21回「薩摩と碁」

ネットで世界中の囲碁ファンと対局 はじめての碁会所

碁で人と文化を知る

はるかな昔から人の生活と囲碁が深く関わっている。興味深い知恵と歴史を紹介。
(毎月月末頃更新)

「薩摩と碁」

 

西南戦争で西郷隆盛(1827-1877)が死んだことを、英国留学中に知った東郷平八郎(1848-1934)は、「日本にいたら西郷さんの下に馳せ参じただろう」と言ったそうです。明治44(1911)年、英国王の戴冠式に出席のため乃木希典とともに渡英した東郷は、乃木と烏鷺を毎日楽しみながら長い船旅を過ごしました。

西郷が城山の洞窟にあって、自決するまでの数日間、読書と碁で時を過ごした話はよく知られています。

暗殺される前の数年間、本因坊秀栄と親しかった大久保利通(1830-1878)は「私から碁をとったら死にます」と言ったという。大久保の次男が牧野伸顕(1861-1949)、大正13(1924)年に創立した日本棋院の初代総裁です。大久保と同様に私欲のない牧野を、女婿の吉田茂はたいへん尊敬しました。

死期を悟った岳父牧野の言葉が吉田の回想あります。

「自分は生涯、良心に疚しいことを一度もしたことはなかった」

父を見習ったのか、牧野も財産らしきものをほとんど残しませんでした。

刎頸の友であった西郷と大久保、そして東郷も同じ鹿児島城下の加冶屋町(当時は70戸ほど)に生まれました。古くから薩摩は碁が盛んな土地でした。

薩摩藩主・島津氏の祖は、鎌倉幕府の御家人であった惟宗忠久(これむね ただひさ 1179-1227?)です。忠久は島津の系図では源頼朝の庶子とありますが、近年の定説は藤原摂関家に仕えた惟宗忠康の子とみています。

惟宗氏のルーツは4世紀後半に朝鮮半島から渡来した弓月君(ゆづきのきみ)と伝わります。弓月君が率いた大集団が大和政権に寄与した秦(はた)氏となり、平安時代になると秦氏の子孫の多くが惟宗氏を名乗りました。

頼朝も北条氏一族も碁を好んだので、鎌倉武士の多くは碁を打ったでしょう。また、実質的に碁を日本に伝え、広めたのは渡来系の人々でしたから、忠久が頼朝の子であろうとなかろうと、島津では囲碁を嗜む家風が脈々と受け継がれてきたにちがいありません。

島津久光(1817-1887)も碁をたいへん好みました。安政5(1858)年に第28代当主の兄斉彬(なりあきら)が、翌年に父の斉興(なりおき)が死に、薩摩藩最高権力者となった久光は、武力による倒幕へと向かいます。

開明君主の斉彬に心服していた西郷と大久保。江戸にあって斉彬の手足として働いた西郷が久光に信を寄せなかったのに対し、大久保は自ら久光に近づきました。久光の碁敵・吉祥院住職乗願に碁を師事したのです。乗願を通じて久光は大久保を知りました。

桜島を背景に始まったNHK大河ドラマ「篤姫」で、ヒロイン宮崎あおい(篤姫)が瑛太(肝付尚五郎)と碁を打つシーンが話題になっています。碁を知らない二人は昨夏に日本棋院を見学し、瑛太さんは碁盤と碁石を買っていったそうです(週刊碁)。

収録に立ち会っている梅沢由香里五段、桑原(旧姓祷)陽子五段の指導で、碁を打つ二人の手つきは少しずつサマになって行くでしょうか?

(2008年2月発表作品)

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