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トップページ > エンターテイメント > はじめての碁会所 > 第22回「琉球の碁(1)」

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碁で人と文化を知る

はるかな昔から人の生活と囲碁が深く関わっている。興味深い知恵と歴史を紹介。
(毎月月末頃更新)

「琉球の碁(1)」

 

沖縄本島本部半島の運天港を臨む高台に「為朝公上陸之趾」と書かれた石碑(写真掲載ページは「目からウロコの琉球・沖縄史」2006年1月9日記事)があり、元帥伯爵東郷平八郎の署名も読めます。源為朝(1096-1156)が琉球に漂着したという伝説が真実なら、琉球に碁を伝えたのは為朝かもしれません。

為朝は源義家(1039-1106)のひ孫、源頼朝(1147-1199)の叔父です。御所に昇殿が許された最初の武士である八幡太郎義家は、公家たちと頻繁に碁を打ちました。頼朝が碁を好んだのも確かですが、挙兵した伊豆山神社で碁を打ちながら策を練ったという話の真偽は不明。源氏の一族は碁をよくしたのでしょう。

明治5年、明治政府が「琉球国の処置」を初めて討議した提議書に「中興の始祖舜天、源為朝の遺裔と云う説はしばらく措き」と「為朝伝説」が記されています。

琉球最初の「世の主」(一般的には王)は舜天とされます。江戸時代の初期、琉球最初の歴史書『中山世鑑』(向象賢)によって、舜天は為朝の子であるという話が広まりました。琉球の為朝伝説はそれ以前からあったようです。古くからの日本との交易、日本文化の伝播によって琉球の人々の心に培われた大和への憧憬が、為朝伝説の背景にあるとみられます。

    15世紀は沖縄における仏教のもっとも盛んな時代であった。仏教伝来以後、本土の学問の紹介者であった仏僧は、和訓漢文と共に和文、和歌をも伝えた。

『比嘉春潮全集』(1973)にこうあります。沖縄史学者の比嘉春潮(※1)は囲碁を好んだらしく、全集第5巻に「沖縄の囲碁の歴史」が収められています。おそらく、沖縄囲碁史に関して研究者が書いた最初の資料でしょう。同じ沖縄タイムス社が1976年に刊行した『沖縄の囲碁』を読んで、私はこの著作を知りました。

比嘉は、1534年琉球に渡来した明(中国)の冊封使(※2)陳侃が初めて使録を書き、その『使琉球録』に琉球語として「棊子」を採録しているから、「すでに沖縄には囲碁があったと見える」と述べています。棊=棋で、棊と碁は同じ意味です。

琉球に仏教が伝わったのは13世紀後半、日本は鎌倉時代でした。鎌倉幕府・北条氏が禅宗を重んじ、仏教は津々浦々の民衆に広まりつつありました。琉球に渡った最初の仏僧は禅鑑。その名からして禅僧です。

中国・宋の禅林(禅宗の寺)に碁石の音がしない日はなかったといわれます。鎌倉幕府が宋から招いた僧の多くは碁を打ち、渡来僧から様々な文化を学んだ禅僧や武士が碁に親しんだことでしょう。

頼朝や北条氏政権を確立した北条義時(※3)が碁を好んだことを、武士や僧侶は知っていました。琉球に渡った禅僧は、頼朝が碁を打ったと話したかもしれません。碁は仏教とともに琉球に伝わり、広まったのではないでしょうか。

(続く)

※1 ひが しゅんちょう
1883-1977 歴史学者。生地の沖縄で教職、新聞記者、県職員を経た後、1923(大正12)年に上京。改造社編集部に勤務しながら柳田国男らに師事、沖縄研究を始める。沖縄の復帰運動にも尽力。沖縄文化功労賞(1972)。
※2 冊封使
「さっぽう」または「さくほう」の使い。臣従する属国に中国皇帝の勅を伝えた。
※3 北条義時
1163-1224 鎌倉幕府第2代執権。法名の得宗から北条・得宗家と呼ばれるようになった。

(2008年3月発表作品)

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