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トップページ >  > コラム【食材】 > 豆腐を味わう

豆腐を味わう
ー水と大豆と技の融合ー

日本の食文化を育んできた栄養満点の長寿の元・豆腐

醤油、味噌、豆腐、納豆と、大豆からできた食品は、日本料理そのものといえるほど、古来より日本の食文化を育んできた。なかでも豆腐は、今やヘルシーフードとして世界的に注目を集めている。良質のタンパク質をたっぷりと含みながら、肉類のそれとは異なり、悪玉コレステロールを含まない。脂質、ビタミン、ミネラル、さらに成人病の特効薬ともいわれるレシチン、サポニンなどの特殊成分も豊富。そのうえ低カロリーで消化吸収がよい、とまさに健康食品の申し子のような存在なのだ。

それを証明するように、岩手県の厳美地区、富山県の五箇山、沖縄県など、日本の長寿村は豆腐の名産地であることが多い。また、徳川家に三代にわたって仕えた天海和尚は、108歳まで生きたといわれるが、彼の好物は豆腐ときな粉だったそうだ。

うれしいことに、豆腐の上品で淡泊な味は、そのまま味わうのはもちろん、どんな料理にしても美味しい。揚げ出しにしてよし、味噌汁や鍋の具にしてもよし。また締めて水分を切れば、白和えや炒め物など、さらにバリエーションが広がる。豆腐をいろいろな料理に取り入れることは、きっと健康を保つ近道となるだろう。

素材と技術にこだわれば豆腐の味は無限に広がる 豆腐の作り方は、大筋では発祥当時から変わっていない。しかし日本には、製法や地域によってそれぞれ特色ある豆腐が存在する。

まず製法によって大きく、木綿豆腐と絹ごし豆腐に分けられる。さらに木綿豆腐には、型に入れる前の寄せ豆腐、寄せ豆腐をざるに入れて適度に水分を切ったざる豆腐などがある。また、絹ごし豆腐にゴマを加えたゴマ豆腐をはじめ、黒豆で作った黒豆豆腐など、そのバリエーションは豊富だ。

地域でいえば、沖縄県の島豆腐、ゆし豆腐、土佐の一升豆腐、加賀の堅豆腐など。これらの豆腐は普通の豆腐に比べて固く、ずっしりとした重みが特徴。ゆし豆腐は、島豆腐を寄せ豆腐にしたものだが、生で食べることは少なく、汁物などに用いられる。いずれの豆腐も、その原料となるのは「大豆」「水」「ニガリ」の三つ。それだけに豆腐の味は、一に水、二に大豆、三に作り手の技術によって決まるといわれている。

素材が悪ければ出来上がりの味に顕著な違いが出る。作り手の技量にしても決してごまかしがきかない。しかし、極めれば無限の奥深さを持つのが豆腐作りなのだ。

美味しい豆腐に欠かせないタンパク質の多い国産大豆 

大豆はマメ科の一年草であり、夏につけた淡紫の花が豆果を結んだもの。米と並ぶほど品種が多く、現在全国で約60品種が栽培されている。代表的なものでは、北陸のエンレイ、東北のスズユタカ、関東のタチナガハ、中国・四国・近畿・東海のタマホマレ、九州のフクユタカなど。各品種は微妙に成分構成が異なるのだが、豆腐作りに合うのは、タンパク質が多く、脂質が少ない品種である。

産地として定評があるのは、富山、石川、福井の北陸三県。しかしながら現在、日本で消費されている大豆の98%は輸入大豆が占めている。輸入大豆と国産大豆の大きな違いは、脂質の含有量。輸入大豆は脂質が多く、豆腐作りにはやはり国産品が適しているといえる。幸いなことに、大豆消費の80%を占める製油には国産大豆を使用することはまずない。だから、豆腐作りのために貴重な国産大豆を確保することができるのだ。

軟水が豊富な日本の土地は豆腐作りに最適の国だった 

豆腐の約80%を占める水は、まさに豆腐の命。「名水産地は料理も美味しい」とはよく言うが、豆腐はその代表格だ。豆腐作りには、余分な成分を含まない軟水で、できるだけ無味の水を使った方が大豆本来の甘みを最大限に引き出し美味しく仕上げることができる。

日本では、ほとんどの地域で豆腐作りに適したこの軟水が豊富に得られる。明治時代には、料理人が豆腐を作るために、わざわざ京都から東京まで水を運ばせたというエピソードがある。京都の水は、日本の中でも特に質が良いと言われているため、当時の料理人の中には、こだわって取り寄せたものもいたのだという。

中国で発祥した豆腐が、日本に伝わり、これだけ日本人のあいだで広く親しまれてきた理由のひとつには、「水が豊かな土地」ということもあるのかもしれない。

プロの豆腐職人の仕事とはいつもと同じ味を作ること

豆腐作りの極意を探るため、東京・人形町で古くから豆腐屋を営む「双葉」を訪ねてみた。双葉の創業は明治40年。以来100年もの長い年月にわたり、地元をはじめ銀座界隈や水天宮参りに訪れた人々から愛され続けている。

「豆腐の基本的な作り方は、創業当時からほとんど変わっていないんですよ。なかにはもちろん、釜で煮ていたものがボイラーを使うようになったり、布で絞っていたのが、機械になったりという多少の違いはありますけどね」と話すのは三代目のご主人・田中金一さん。その作り方を木綿豆腐を例に簡単に説明してもらった。

まず大豆を水に浸す。浸す時間は気温や水温によって異なるが、夏で6時間、冬では12時間近くかけるそうだ。そして、十分に水分を吸った大豆に水を加えながら、細かく砕いてトロトロとした溶液にする。この溶液をしばらく煮込んだら濾して、繊維を含むおからを取り除き、豆乳を搾り出す。次に、豆乳にニガリを加え、固まったら穴の空いた器に移し、重石を乗せて水分をほどよく切ったら、木綿豆腐の出来上がりである。

「作り方は一見単純なように思えるけど、豆腐の味は水の温度、気温、大豆の浸かり具合、それにその日の自分のコンディションによって、微妙に変わってくる。やっぱり人間の手で作るものだからね。調子がいい時はそれなりにいい物ができるし、調子が悪い時はそう簡単にはいかない。そこを長年培った経験と勘でコントロールしていかなくちゃダメなんだよ。だってお客さんはうちの豆腐が食べたくてわざわざ買いに来てくれるんだから、毎日味が変わっちゃってたら困るでしょ」

どんな状況であっても、いつもと変わらない味の豆腐をずっと作り続けること。それがプロの職人の仕事だと田中さんは言う。この気持ちと確かな技術、そして経験があるからこそ、双葉は100年もの長い間、多くの人々に愛され続けてきたのであろう。

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