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「能」の所作で深層筋を鍛える
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安田 登 |
下掛宝生流能楽師 |
能楽師の動きを支える深層筋600年以上にわたって伝承されてきた日本の「能」。能の世界で驚かされるのは、70代・80代の能楽師が現役で活躍し、優雅な舞を披露していること。 これは能楽師が能の所作(しょさ)によって深層筋(しんそうきん)を鍛え、バランス感覚を身に付けているためです。 深層筋は体の奥深くに位置する筋肉で、代表的なものに大腰筋(だいようきん)があります。大腰筋は背中の下部から太腿の内側までつながる太くて長い筋肉で、上半身と下半身をつなぎ、姿勢を保つ役割を果たしています。体の表面には現れないため、普段の生活では意識することはなく、トレーニングジムなどで鍛える機会もほとんどありません。 そこで、4回にわたり、能の所作を通じてこれまで意識することのなかった深層筋を活性化させる方法をご紹介します。 |
日本人にとって身近な「正座」は姿勢を良くし、体に"軸"をつくって深層筋を活性化させます。現代人は「正座」をする機会が少なくなりましたが、1日5分でもよいのでチャレンジしてみましょう。無理のない範囲で正座の姿勢をすることが、能の所作に近づく第一歩です。
体の中心『丹田(たんでん)』を意識して座ります。下半身には力がみなぎり、上半身は力が抜けている『上虚下実(じょうきょかじつ)』といわれる状態です。 |
能の正座はいつでも動きだせるよう、体の軸はやや前傾気味。 |
次の動作へと備える能とは異なり、日常生活での正座は仙骨(せんこつ)を真っすぐ伸ばすことが基本。耳と頭頂を結ぶ線を意識し、首の上に頭が乗るように位置を調節します。 |
足を重ねずに、かかとをほんの少し広げます。このとき、骨盤底(こつばんてい)が広がることが分かります。正座をしたとき、両方の坐骨とかかとが触れる部分と恥骨を結ぶ三角形が骨盤底。筋肉や線維組織でできており、腹部の臓器を支えています。 |
仙骨が斜めになると、腰・背中・首がすべて曲がってしまいます。 |
骨盤と仙骨・坐骨の位置関係を知ろう
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正座の姿勢で骨盤底呼吸をすることで、深層筋はさらに活性化します。 骨盤底呼吸はやや難しいので、最初は横隔膜(おうかくまく)呼吸から始めましょう。
横隔膜呼吸とは正しい腹式呼吸のことで、吸うときにおなかを膨らませ、吐くときにへこませます。腹式呼吸というと訓練しなければできないイメージがありますが、実は人が無意識に行っているのは腹式呼吸。難しいものではないので、横隔膜が上下するのを意識しながら、ゆっくりと呼吸しましょう。
横隔膜呼吸ができたら、横隔膜とともに骨盤底も連動して上下することを意識します。
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右ページを参考に姿勢を整えます。骨盤底を意識するのを忘れずに。 |
同時に横隔膜と骨盤底が下がり、おなかが出ます。このとき、坐骨がかかとを押しつけているのを感じます。 |
横隔膜と骨盤底が上がり、おなかがへこみます。 |
横隔膜呼吸と骨盤底呼吸のほかに、胸式呼吸で大きく“吐く”練習をするとよいでしょう。
細めのストローを一本用意し、鼻から息を吸って、ストローをくわえて息を吐き出します。これを一日三分間続けると、深く息を吐くことができるようになり、それに呼応するように息を吸うのも深くなります。
慣れてきたらストローを外して行います。そのときは、まるでストローがあるように唇をすぼめて息を吐きます。
イラスト/向井勝昭
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