日本舞踊
第3回 ねじる・重心を取る 深呼吸をしながら動く
 |
尾上青楓(おのえ・せいふう)
日本舞踊 尾上流師範
1976年尾上流三代家元 二世尾上菊之丞の長男として生まれる。2歳から同家元に師事。5歳で初舞台を踏み、その後常磐津英寿、今藤政太郎、藤舎呂船に師事。1990年に尾上青楓を襲名。95〜97年まで3年連続で新春舞踏大会大会賞、97年には同時に会長賞も受賞。現在は第一線で舞台に立つかたわら、後進の指導にも当たっている。 |
指先まで神経を通わせ丸く美しい曲線を描く
日本舞踊で難しいものの一つに、上半身の動きがあります。上半身には、頭、顔、首、あご、肩、胸、腕、手がありますが、日本舞踊ではこれらを連動させ、円を描くように動かして独特の美しい曲線としなやかさを表現しているからです。特に女役は、女性らしさを表現するために肩から胸にかけてのしなやかな動きが必要とされるため、腰をしっかりと安定させて上半身を支えなければなりません。
また、日本舞踊には、「ねじる」という独特の動きがありますが、このときも腰は重心を移動させる大切な役割をしています。もちろん、日本舞踊に限らず、安定した動きにはスムーズな重心移動が欠かせません。
普段の生活では重心の取り方など意識することはないかもしれませんが、これは安全に歩くためにも重要です。さらに、指先やつま先にまで神経を通わせることは、全身の血流を良くするのにも役立ちますし、独特の丸い動きは気の流れを整えるといえます。美しく踊るには鍛錬が必要ですが、健康目的ならこうした動きをまねるのもいいでしょう。
上半身の動きを加え呼吸を意識して動く
歩いたり、座ったり、普段の生活でも下半身はよく使います。しかし、上半身は高い所の物を取るなど、特別なことがないと大きく動かす機会がないため、五十肩などにもつながります。日本舞踊の振り付けは、全身を大きく動かすので、全身のストレッチとしても応用できます。深い呼吸を意識して行ってみましょう。
ねじる |
| 指先からつま先まで神経を通わせ全身に血流を巡らせる |
|
|
1.息を吐きながら左足を引き、左手は物をすくい上げるようにして頭の横に上げ、右手は横に開く。右手に扇子を持たない場合は、指先を伸ばす。
|
 |
2.息を吸い、息を吐きながら今度は右足を引き、右手をすくい上げるようにして頭の横に上げ、左手の指先を伸ばして横に開く。右手に扇子を持たない場合は指先を伸ばす。
|
 |
3.息を吸い、吐きながら1の動作に戻り、これを数回繰り返す。以上の動作は女の形(かた)になる。
※頭の横に手を上げるときにわき腹が伸び、ストレッチ効果がある。 |
重心を取る |
| 股関節を割って腰を落とし重心を安定させる |
 |
1.腰を落とし、息を吐きながら右足を後ろに引く。このとき、左足はひざとつま先が正面に対して45度に開くようにし、重心はへその下の丹田に置く。左手は横に肩よりやや上に上げる。右手に扇子を持たない場合は、手を軽く握る。
|
 |
 |
2.息を吸い、息を吐きながら今度は腰を落としたまま1と同様に右足を前に出し、重心をへその下に置いて安定させる。以上の動作は男の形になる。 |
深呼吸をしながら動く |
| 肩関節を柔軟にしゆっくり深呼吸を繰り返す |
|
|
|
1.背すじを伸ばし、ひざを緩めて立ち、下腹部に軽く力を入れて重心を安定させる。 |
 |
2.両手の手のひらを内側にして、息を吸いながら物をすくうようにゆっくりと顔の両脇まで上げる。このとき両脇が広がらないように意識する。
|
 |
3.息を吐きながらゆっくりとひじから両手を下ろし、胸のあたりから手首を返して下に向け、両腕を体の横まで下ろす。 |
| |
|
|
|
|
|
4.手のひらを外側に向けて、息を吐きながら大きく円を描くように両腕を上げる。ひじは自然に伸ばし、肩の関節をリラックスさせ、両手を上げる。 |
 |
5.手のひらを外側に向け、頭の前方で円を描き息を吐ききる。腕が高く上がらない場合は、無理をせず上がる範囲で行い、徐々に高く上げるようにする。
|
 |
6.息を吸い手のひらを内側に向け、息を吐きながらゆっくりとひじを下ろしていき、胸のあたりで手のひらを返して、両手を下げる。重力を利用しながらゆっくり動かすことを意識する。一連の動作を、ボールが上下するように、呼吸に合わせて自然な流れで行う。
|
教室に行ってみよう!
まねることから始めるのが上達への近道
日本舞踊の流派は、歌舞伎の役者や振付師が興した流派がベースになっているため、一般の人には敷居が高いおけいこというイメージがあります。しかし、実際には歌舞伎の世界とはまったく無縁の一般のOLや主婦の人も大勢習っています。踊りは、実際に師匠の動きを見て、まねることで上達していくものなので、興味を持った人はぜひ教室に足を運んでみてはいかがでしょう。
今回ご指導いただいた尾上青楓先生が指導してくれるのは、「尾上流」の踊りです。「尾上流」は、九代目・團十郎の舞踊観と五代目・菊五郎、藤間流の舞踊を合体させ、六代目・菊五郎の芸術観により統合された流派で、約60年の歴史がある由緒正しい流派です。また、見てよく分かる舞踊を目指しながらも、上品で格調の高い舞踊としても知られていますから、踊りだけでなく、美しい所作を学ぶという意味でもおすすめです。おけいこは月4回で、すべてマンツーマンの指導が受けられます。詳しくは下記にお問い合わせください。
[お問い合わせ先]
尾上流事務所
東京都中央区銀座7-16-21
03-3541-6331
http://www.onoe-ryu.co.jp
|
|
『暮しと健康』2008年3月号より転載