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トップページ > マネー・経済 > シニア型社会への指針 > 第5回対談 田酒造株式会社 代表取締役社長 田雄一郎 さん (2/2)
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第5回対談 はま田酒造株式会社 代表取締役社長 はま田雄一郎さん

「日本の大人」のための本格焼酎を薩摩から発信します。 (2/2)

大人たちに相応しい「カッコイイ酒」を創り出すのが私の使命

はま田: そこがポイントだと思うんです。日本中の人の感覚が若くなり、しかも皆が豊かになったのが今です。そんな今の時代に相応しい「カッコイイ大人」を考えなければいけない。そういう大人に喜ばれる酒を提供しなければいけない。ではどうすればいいか? 私たちはこう考えました。大人の酒を造るのに相応しい場を設ける。相応しい人も育てる。同時にカッコよく大人の酒を飲める場を設ける。そうすることで、カッコイイ飲み方ができる大人を増やしていこう、と。

山崎: お酒の飲み方にも、いろいろありますね。若い飲み方もあれば、カッコイイ大人の飲み方もある。

はま田: そうです。酒を飲んで酔っぱらいたい、というのが若い飲み方(笑)。もちろん、そういう飲み方があってもいい。けれど、もう少し成長すると「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」という標語ではないですが、ルールを守ってほどほどに楽しむ、という大人の飲み方になる。では「カッコイイ大人の飲み方」は何かというと、例えば故郷やこれまでの人生を振り返ったりしながら、人生を語って飲む、というような飲み方ではないかと思うのです。人生を一人語りできる酒や酒場。それを今のシニアは求めているはずだと思う。

山崎: そうした考え方で生まれたのが「なゝこ(七古)」でしたね。シニアコミュニケーションもお手伝いして創り出した焼酎ですけれど、田さんは最後まで日常性と工芸性のバランスというものにこだわっていました。

はま田: 田酒造では「斉彬の夢」という本格焼酎も造っています。伝統に則った蔵でよみがえらせた本格焼酎を、薩摩切子のボトルにつめてご提供しています。これも1つの「大人の酒」だと自負はしていますが、今の時代のシニアにとって、より身近なカッコイイ酒を造る必要性をずっと感じていました。伝統性のみならず、革新性も備えていなければいけない。工芸性も大事だが、あまり日常からかけ離れていてもいけない。大人が気持ちよく人生を語れる酒として、バランスを重視していたわけです。だから日常工芸品的な本格焼酎として「なゝこ(七古)」のプランが固まった時には、「よし、これしかない」と確信できました。

伝統の価値を継承しながら、革新を起こしていくところに大人しか味わえない醍醐味がある

山崎: それにしても、田酒造さんはこれまでにいくつも「伝統性」と「革新性」が同居した焼酎を造ってきました。伝統を大事にしながら、新しいものを生み出す……これは、そうそう簡単にできることではないと思うのですが、何か秘訣でもあるんですか?

はま田: 一言でいってしまうと、私がわがままだからです(笑)。「古いものはいい!」と信じつつ、「新しいものが創りたい!」と願う気持ちが、非常に強い。ただし、そういう意味での「わがまま」ばかりではありません。わがままとは、すなわち私事ですよね。では私事は、自分個人だけで完結する類のものなのかというと、そうではない。私がこの世に生を受けたのは、父と母の存在があったから。
そして、父と母が生きていける社会がこの世にあったからです。そうして元を正していけば、すべての私事は、公事や社会事とつながっていく。はるか昔の人々の営み、つまり伝統やかつての社会規範、文化にもつながっていく。
具体的に言いましょう。田雄一郎の私事は、例えば幕末から維新の時代を生きた西郷隆盛さんの思想や生き様に、大いに影響を受けています。武士の世の中が終わろうとしている時代を認識しつつ、それでも武士道的規範の素晴らしさをも認識していたのが西郷さんです。士分が消えゆく時代だからこそ、武士道の規範や考え方を広く伝達しなければいけない、と決心し、下野して教育という事業を始めた人。過去の価値を冷静に評価し、今という時代を的確に判断し、これからの時代を強く考える。そういう偉大な人が、同じ郷土にいた事実があったから、今の田雄一郎はいるし、伝統と革新の両方を追い求めているのだと思っています。

山崎: では最後に、仕事を引退した後の田さんの夢を教えていただけますか?

はま田: 昨年、鹿児島で薩摩金山私学校の総長に就任し、同時期に田農学部というものを設立しました。2つが共通しているのは、薩摩あるいは鹿児島に伝わる文化や思想や産業を、後の世に伝承していく目的を持っている点です。いずれ私自身が酒造の仕事から引退しても、こうした伝承、継承の事業には関わっていきたいと考えています。
前々から「都会の便利さを支えているのは地方だ」という持論、「地方ならではの人の育成があって、初めて日本は豊かな国になる」という持論が私にはあります。
単に薩摩で生まれた若者たちに、かつての薩摩の素晴らしき文化や思想を伝えるだけで終わらず、そうして学んだ彼らを通じて日本中の人たちに「都会にはない薩摩の魅力」を発信したいのです。

山崎: そもそも、薩摩焼酎の伝統を今の時代に適合させながら発信しているのが田酒造。ということは、これまでにも田さんは「発信」し続けてこられた。仮に酒造という手段から離れたとしても、薩摩を生きる大人として、全国に発信する営みを続けていくということですね。もしかしたら、リタイア後も現役の「カッコイイ大人」であり続ける秘訣が、そこにあるのかもしれません。伝統を受け継ぎ、革新を起こしながら、発信をしていく。田酒造の経営方針自体が、シニアとしての生き方のヒントだったように思えてきました。本日はありがとうございました。
(敬称略)

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はま田酒造株式会社 代表取締役社長 はま田雄一郎さん
はま田 雄一郎
(はまだ ゆういちろう)
田酒造株式会社
代表取締役社長

座右の銘
自立自興

略歴

1953年 鹿児島県生まれ
1984年 はま田酒造株式会社  東京支店開設
代表取締役東京支店長就任
1986年 はま田酒造株式会社
代表取締役副社長就任
1994年 はま田酒造株式会社
代表取締役社長就任
 
<その他の活動>
いちき串木野商工会議所会頭
鹿児島県酒造協同組合理事
鹿児島県中小企業団体中央会理事
鹿児島県さつまいも産業振興協同組合理事
鹿児島県工業倶楽部副会長
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