
山崎: ホテルオークラは、ビジネスでの利用、とりわけエグゼクティブ(経営者)層からの支持が高いことでも以前から知られていますね。そういった方々はお仕事をリタイアした後でもできればオークラを利用したいと思うはずです。今後はそういうかたが増えていくわけですが、なにか心がけていらっしゃる点はありますか?
小川: 例えば、大型アミューズメント施設に隣接しているホテルであれば、利用客の大半はファミリーです。にっこり笑って、サービスの数々をご紹介するような接客を身につければ、スタッフはやっていけます。ところが、おっしゃるとおりオークラは伝統的に、エグゼクティブのお客様も多くご入用いただいています。接し方をあえてビジネスライクにしたほうが、喜ばれたりもするわけです。あまりニコニコ笑っていると「なにを笑っているんだ」とお叱りを受けかねない(笑)。あまり長々サービスの説明をしていると「要点だけ言え」と言われるかもしれない(笑)。まあ、それは冗談としても、求められるのはキビキビと動き、謙虚に接する、つまり「素早く、正確にこなす」ことが肝心なのです。
山崎: 私もよく仕事でホテルを利用しますから、実によくわかります(笑)。スピーディで正確に必要なことを淡々とこなしてくれるホテルマンのほうが心地よいです。
けれどももちろん、地方や海外から観光で来られるお客様もオークラにはいらっしゃるわけですから、サービスのスタイル自体を、お客様によって使い分ける必要があるわけですね?
小川: 今後、お仕事を離れたシニアのお客様をお迎えしたりする時は、逆にそうしたビジネス流儀のサービスは望まれないとも思います。ご夫人を同伴されるケースもあるでしょう。そんな時に、変にきびきびと動いてしまうと、ご夫人方からは敬遠されてしまうかもしれません。サービスの質の切り替えもときに研究し、評価して戴かなければなりません。
山崎: 何か具体的に、シニア夫婦を想定したサービスをお考えですか?
小川: 例えばご夫婦でいらしてもらって、ジャズの本格的な演奏をバックにダンスしたり、ワインを楽しんだりできるような催しを思案中です。また、すでに好評をいただいているのが、ワインと上手にお付き合いする手解き、サポートを行っているのが「ホテルオークラ ワインアカデミー」です。試飲をしたり、楽しみ方を皆さんで学んだり、というお気軽感覚でありながら、スタイルをも学ぶことで、シニアの女性の参加者が多いことが特徴です。これからのホテルは「飲む、食べる、泊まる」だけではなく「楽しめる」が必要になってくる。そう思うのです。
山崎: そうですね。実はこれも当社の会員の方々の声なんですが、「せっかく時間もできて、いろいろと楽しみたいのに、遊び場が少なすぎる」という意見が多い。たしかに旅行という楽しみについては積極的なシニアですが、もっと違う楽しみを求めていますね。遠くに旅行に行くだけでなく、都内にあってすぐに行けて、なおかつとっても楽しい場所というものを。そうした意味合いでも、これからホテルという空間は注目されるでしょう。
小川: 私も同感です。日常的に遊べる場所、しかも「違い」のわかるかた、上質さを求めているかた、に喜ばれる遊び場を、私たちホテルは提供していかなければいけないと思います。 |